【東京エルフ】 小金井エルフ ~アスラウドさん家の場合~
- 2014/11/28
- 13:56

東京⇔エルフ間を結ぶ片道1時間の小休止
Ep1 小金井エルフ アスラウドさん家の場合
東京都小金井市関野町
「くぁ、―――ねみぃな……」
午前7時36分、家の前で革靴の爪先をトンと詰めてあくびをする。
俺の名前は国近鉄平、17歳、足柄高校二年の男子だ。得意科目は体育、趣味は料理。目つきの悪さは親父譲りだ。目尻の涙をぬぐって背骨を鳴らすと、隣の家のドアが開く。
「ウッス鉄平……」
今にも死にそうな顔をして現れたイケメンは俺の幼馴染。フリス・アスラウド、17歳、同じく足柄高校に通うエルフだ。エルフ族特有の長い耳に金髪碧眼、スラリとした長身にモデルもかくやという彫りの深い端正な顔立ちをしている筈だが、昔から超がつくほどの低血圧で朝は十中八九唇が蒼く目がショボショボしている。
「……寒そうだな」
「死ぬ」
加えて重度の寒がりであり、その癖冬物を出す事に横着する為季節の変わり目はこの有様だ。瀕死のチワワもかくやというほどにフルフルと震えている。マナーモードかお前は。
小刻みに震える友の背後でまた扉が開いた。
「お兄ちゃん、お母さんがマフラーぐらいしてけって!あ、テツ兄おはよ!」
飛び出してきたのはこれまた端正な顔立ちをしたエルフの美少女だ。長い金髪をyやや後ろで左右二つに分けた、所謂ツーサイドアップだ。相変わらずあざとい。こいつは俺のもう一人の幼馴染、ミンティ・アスラウド、16歳。今年俺達と同じ足柄高校に入学して来たフリスの妹だ。
「ウッス、兄ちゃんと違ってモコモコしてるなお前」
紺色のダッフルコートに赤いマフラー、耳当てまでしている。こいつらは兄弟そろって寒がりだが流石にまだそこまで寒くはないと思うが。
「ムフフこの前買って貰ったんだぁ、見てみて!」
「ふむん」
要するに卸したてのコートを早く着たかった訳か。目の前でくるりと回ってみせるミンティ、なるほど、モコモコしている。
「ていうか耳当てから耳出てっけど意味あんのコレ?」
円から大きく飛び出した耳の先端をキュッと両方握ってみる。アラ、あんた耳あったかいわね。
「だ、だって可愛くない?えへへ」
「鉄平に、そんな事言っても無駄だろ……うぅ寒い……」
「お兄ちゃんは瀕死でもうっざいなぁ、そんな事ないもんねテツ兄?」
うむ、分かるぞ、なんか新しい感じだ。ピッカピカの一年生感出てるよお前。
「可愛い可愛い、お前小金井で一番輝いてるよビューティホー」
「む~~」
適当に相槌を打つと、俺はミンティの手から白いマフラーを受け取る。
「フリスケや、マフラーですよ」
「……嫌だ」
フリスは今にも凍死しそうな表情で、尚も拒絶する。
「妹よ、なして?」
とりあえず横の妹に事情を聞いてみる。
「はぁ」
ミンティは呆れたように肩を落としてかぶりを振る。
「お兄ちゃんお母さんの手編みだから嫌なんだって」
なにアンタ思春期なの?
「違う」
「違くないでしょ」
「俺は今弱い自分を鍛え直そうとしているだけだ、一説によればこの世界にはスノーエルフという寒冷地に特化したエルフの存在も確認されている、所謂人間で言うフィンランド人みたいなもので俺は過酷な修行によってその――」
「ほぅらマフラーですよ~」
「やめろ俺はそんなものに屈しな、ふわぁあったかぁ~い」
即落ちじゃねぇか。巻いてやったマフラーを後ろで適当に結んでやる。すると今度は暖かくなったせいか鼻が垂れ始める。
「お兄ちゃん、鼻出てるよ」
ミンティがポケットからティッシュを取り出して鼻にあてる。
「はいちーん」
「ずびーーっ、……ありがと」
「どういたしまして」
こんな要介護老人みたいなヤツが、朝九時を過ぎると成績は学年五本指、生徒会長と野球部キャプテンを兼任した完璧超人に変貌するから不思議だ。
「じゃあ行くか」
「うん」
「うう……鉄平」
「なんだよフリス、まだ何かあんのかよ」
「寒くて関節が動かない、おぶってくれ」
甘えん坊さんかお前は。
「嫌だよ、ミンティならまだしもお前重いじゃん」
「え?あたしならいいの?わーい」
「ぐおっやめろ、やっぱお前も重い」
「はぁ!?重くないよ私!?」
「ちょっおま、人の背中でキレんなよ」
「寒い……」
いい加減バスに遅れそうだ、面倒だからこいつらまとめて抱えていくか、と考えた刹那、アスラウド家から声が響いてくる。
「あら、ミンティ、フリス?そこテツ君いるの?」
「いるよ~お母さ~ん」
俺の背中におぶさったまま扉に向けて声を張り上げるミンティ。
ドタドタと家の中を走り回る音がして、三度背後のドアが開かれた。
ガチャン。
「おはよう、テツ君。今日はゆっくりなのね」
出て来たのはエプロン姿の金髪を結い上げたエルフの女性だ。クロレ・アスラウド(年齢不詳)こうしてミンティと並べて見てみると姉妹にしか見えないがこれでも二人の高校生を出産している立派な母親だ。ミンティもかなりスタイルが良いが、リィナおばさんはなんというか、かなりメリハリのついたスタイルをしている。
「おはようございます、クロレおばさん。試験前なんで朝練休みッス」
「あらぁ、そうなの~良かったぁウチの子達二人とも抜けてるからもう毎朝心配でね~」
「お母さん、で、なんなの?遅刻しちゃうよ」
「あら、アタシったらごめんなさい。テツ君と話すの久しぶりだからオバサン嬉しくなっちゃって」
「お・か・あ・さ・ん?」
「はいはい、テツ君、はいどうぞ」
クロレおばさんは赤白の模様のマフラーを俺に手渡してくる。
「マフラー?」
「近頃冷えて来たでしょう?うふふ、ミンティとフリスのも私が編んだのよ?これでテツ君もお揃いね」
「え、あ、くれるんスか?いやでも」
「いいのよも~、テツ君もウチの子達と同じオッパイで育ったんだから、半分ウチの子みたいなものよ?うふふ」
「い、いや、その」
そうなのだが、確かにオバサンは、俺の所謂乳母だったのだが。ドギマギする俺にミンティが助け舟を出してくれる。
「お母さん、そういうのマジ引くからやめてよ。テツ兄困ってんじゃん」
「寒い……」
「あらそう?でもホントの事なのよ?」
「もうっ遅刻しちゃう!テツ兄!お兄ちゃん持って走って!」
「あ、おう!……ふんっ」
「俺を、装備していくかい」
「お前、落とすぞ」
「ごめん」
「いってらっしゃ~い気を付けるのよ~」
――――――
――――
――
揺れるバスの中、両脇の兄妹エルフに挟まれながら俺はオバサンにお礼を言い忘れた事に気が付く。だが、あんなのを朝から言われたら誰だって思考停止に陥る。
『いいのよも~、テツ君もウチの子達と同じオッパイで育ったんだから半分、ウチの子みたいなものよ?うふふ』
「……」
「ねぇ、テツ兄」
「ん?」
「今エッチな事考えてたでしょ?」
「考えてねェよ」
「む~……ホントぉ?」
何故非難がましい目で見られなきゃならんのか、どちらかといえば俺は被害者とかそっち系だろ。だいたいエッチな事ってお前。エッチな事……。
――うふふ、テ・ツ・君 ♡ ――
「……」
(いかん)
猛烈な勢いでかぶりを振って頬を張る。
パァン!
(アレはダチの母ちゃんアレはダチの母ちゃんアレはダチの母ちゃん……)
これだからエルフってやつは困る。なんでお前等の母ちゃんはあんなに若くて可愛、――じゃなくて綺麗なんだよ!!うちの母ちゃんと比較してみろよ!!
「鉄平」
俺が悶々としていると徐々にバス内の暖房効果でシャッキリし始めたフリスが俺に声をかける。
「昨日の阪神戦観た?」
「観たけどよ……」
「またお兄ちゃん、野球のはなし?それより昨日エミちゃんがさ~」
「お前等ステレオで別の話しすんなよな……」
こうして、俺の一日が始まる。

東京都とは、日本の都道府県の一つであり、東京都区部、多摩26市、東京都島嶼部を管轄する地方公共団体である。
エルフ(英: elf, 複数形elfs, elves)とは、ゲルマン神話に起源を持つ、北ヨーロッパの民間伝承に登場する種族である。
東京エルフとは、東京に住むエルフの日常を描く時間制限つきのお題掌編である。
我々日本人はエルフを愛している、この極東の国家は世界でも有数のエルフ友好民族国家である。
エルフは日本の西洋ファンタジー黎明期から常に我々を牽引してきた。時に儚く、時に勇ましく、時に優しく、時に邪悪に我々とエルフの関係は連綿と続いて来た。最早我々とエルフは他人ではない。隣人以上親戚未満友達以上恋人未満のただならぬ関係だ。
だが少し待って欲しい、大変恥ずかしい、このような記事を書いておいて非常にみっともない事なのだが……いや、笑ってくれても構わない。
私は日本でエルフを見た事がない。
この記事を読んでくれている方はきっとそうではないのだろう。自身の経験不足が悔やまれる、このような若輩がそもそもエルフを呼び捨てにしていい訳がない!!
私はエルフさんを見た事がありません!!!
でも確かにエルフは存在する筈なのです。私が調べたところ東京にはエルフの通う大学まであるのです!!!交換留学というヤツなのでしょうか畜生。

さらにエルフさんはなんと日本の企業にまでその名を轟かせています。
エルフ

エルフ!!!

エエエルフ!!!

我々の日常はこのようにELFによって齎された物流の上に成り立っていると言っても過言ではないです森の民ってすごい。
そんなエルフの東京でのライフスタイルを私も感じたい、もっともっとエルフさんの事知りたい!東京で生活するエルフさんが見たい!!!でも私が書くのめんどくさい!!!
どうしたもんか、とボーとしていると閃きました。
嗚呼。書いて貰えばいいじゃん、と。 天啓を得た私はエモノを探した。エルフを狙う、森の触手のように。(冷静に考えるとエルフもよく魔法で蔦とか使ってバインドするから触手と仲いいですよね)
[2014/11/21 1:06:13] SYOKUSYU: ○○君や・・・
[2014/11/21 1:12:19] 被害者A: なんぞ
[2014/11/21 1:12:41] SYOKUSYU: 一時間掌編やらん?
[2014/11/21 1:13:17] 被害者A: ええで
[2014/11/21 1:10:22] SYOKUSYU: 生きているか
[2014/11/21 1:10:25] SYOKUSYU: 死んでいるか
[2014/11/21 1:10:32] SYOKUSYU: イルカクジラ
[2014/11/21 1:10:44] SYOKUSYU: ラッコ
[2014/11/21 1:10:51] SYOKUSYU: みんな哺乳類だよ
[2014/11/21 1:11:53] 被害者B: 部屋の掃除中だよ _(:3」∠)_
[2014/11/21 1:12:28] SYOKUSYU: 掌編やろうよう
[2014/11/21 1:14:00] 被害者B: 掃除させろよ。苦笑
[2014/11/21 1:14:21] SYOKUSYU: まぁまぁ一時間だけ
[2014/11/21 1:17:41] 被害者B: へぃへぃ、今一段落つけたよ。

(見つけたぁ)ニタァ
[2014/11/21 1:23:02] SYOKUSYU: 今日の一時間掌編はお題が決まっています
[2014/11/21 1:23:22] SYOKUSYU: 『東京エルフ』
[2014/11/21 1:23:48] 被害者B: 既によく分かんねぇなぁ _(:3」∠)_
[2014/11/21 1:23:57] 被害者A: ( ゚д゚ )
こうして私は計五人の東京エルフの収集に成功した。
現在、今回の小金井エルフ、わさび氏の書いた喫茶店エルフ、awa氏の書いたアパートエルフ、じじぃ氏の書いた浅草エルフ、私の書いたオフ会エルフの存在が確認されている。この世にはまだまだダークエルフでもハーフエルフでもハイエルフでもスノーエルフでもいすゞエルフでもないエルフが居るはずだ。
何よりこの記事なら!!!一時間で最低二回分の記事のネタが出来て超楽エルフってやっぱりしゅごいぶひぃっ!!!
次回はカフェエルフをご紹介。
皆さんも街角でエルフさんを見かけたらご一報いただきたい。
東京エルフ、それは東京⇔エルフ間の片道一時間の小休止。
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- テーマ:自作小説(ファンタジー)
- ジャンル:小説・文学
- カテゴリ:東京エルフ
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