お勉強だよ☆触手ちゃん！【ＧＭマナー編①】

　イラストは参謀のＡさんの提供でお送りいたします。


　今回はＴＲＰＧのＧＭをする上でのマナーを考察したいと思う。
　あくまでこれは私の経験を基にした私自身が課しているＧＭ礼儀作法も多く含まれているので、正しいかどうかは別である。ここでの考察が有用であるかどうかは各々のプレイスタイルに応じて刷り合わせて頂きたい。
　とは言うもののこういった場面で普段の自分を鑑みていくのは、例えこの記事の内容が有用でなかったとしても自身のプレイスタイルのシェイプアップには効果があると思われる。
　お暇でしたらこのダイエット講座にお付き合い願いたい。
　しかしまぁ私がネロネロと話し続けているのも華がないので、今日はあの子達を呼んできました。

「コンニチワ！！！触手ちゃんです！！」
　触手ちゃん　このブログのマスコット。TRPG経験者。鬼火ちゃんと一緒にＴＲＰＧで遊びたいけど乗って来てくれない。いつも、鬼火ちゃんの家に入り浸っているが、鬼火ちゃんのスルースキルの前に轟沈を繰り返している。腰から無数の強靭な触手が生えており器用に動かすことが出来る。しかし、この設定が生かされる日が来ることはない。

「なんで、私ん家で……」
　鬼火ちゃん　触手ちゃんの友達。趣味はネットサーフィン。TRPGに最近興味があり触手ちゃんに質問したりする。でも、実際に遊んでみる気はない。ROM専。頭髪が常に燃えていて高い戦闘力を誇るが、この設定が生かされる日が来ることはない。
　二人の初登場はコチラ⇒ＴＲＰＧ宣教師触手ちゃん！


「今回は二人を交えて対話形式での考察を行っていこうと思います。二人ともよろしく～」ネロネロ
「イエエエイ！よろしくあんちゃーーん！」にゅるにゅる！
「イエエエエエイ！！」ニュルニュル！
「……」ごそごそ
「あれ？どうしたの鬼火ちゃん？」にゅるん？
「……あった、これでいいか」
「なにそのボロ布？幽霊ちゃんの忘れ物？」
「お兄さん、ちょっとジッとしててください」
「なん、なんだい鬼火ちゃん？そんな布を持ってにじり寄ってくるだなんて」ビクビク
「すぐ済みます、からっ！！！」ガバァ！！
「鬼火ちゃん！？」
「やぁ！なにするのォ！？やめてぇ！？」びちびち！
「うるせぇ！！」ドタバタ！！
「いや！乱暴しないで！！このまま拘束してアレする気でしょ！？アレ！！」びったんびったん！
「アレ？」
「ホラあれだよ！エロ同人みたいに！エロ同人みたいにぃ！！！！」びちびちーん！
「兄妹そろって人の部屋でビチビチのたうってんのが狭いっつってんだよ！！！オラァ！！！」

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　５分後……。

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「兄ちゃんが……」

「ゆるキャラみたいな有様に！！」
「うう……もうお嫁にいけない……」
「たこ焼き？明石焼き？」
「「すんませんした」」
「……なんで触手ちゃんまで謝るの？」
「なんか、つい癖で……」
「妹よ……」


　◆今回は【シナリオ構築のマナー】
　
「二人は吟遊ＧＭというものを知っているかな？」
「知ってるよ！昔の兄ちゃんだよね！」
「ゴッフゥ」（古傷が開いた）
「ニコ動のコメントでちょこちょこ見るけど……よくは知らないです」
「鬼火ちゃんは良い生徒だなぁ」ニュルニュル！
「あ、どうも。ただキモイんで寄らないでください」
「んグハッ」（吐血）

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【吟遊ＧＭとは】
　吟遊ＧＭという言葉がある。主にＮＰＣが大活躍してＰＣの見せ場を奪い続けたり、あまつさえＮＰＣが強力過ぎてＰＣ達が居てもいなくても変わらないようなシナリオを回すＧＭの事を指す。
　プレイヤー達はそういったシナリオの場合、ＧＭからＮＰＣの活躍をひたすら聞かされ続ける『聞き役』に回される。その事から吟遊詩人をもじって吟遊ＧＭと呼称されている。

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「……なるほど、言われてみれば動画でもＧＭパートが長かったりＮＰＣがよく活躍してるシリーズでちょくちょく見ましたね」
「うんうん。でも、よく勘違いされる事だけど【マスターシーンが多い】【ＮＰＣが活躍し過ぎている】【自由度が少ない】これらの要素は吟遊ＧＭとは一切関係がないんだ」
「え？そうなの？」
「むふふ。そうだぞぅ、以上の点で自分のシナリオやマスタリングが吟遊なのではないかと不安に思う事がある方は安心して頂きたい。杞憂だ。」
「……じゃあ吟遊ってどういう状態を指すんですか？」
「うん。吟遊の原因はＧＭが自分の為に用意したシナリオ、そこに尽きると私は結論づけた」
「？？？でもＧＭは自分の為にシナリオを作っちゃいけないの？」
「突き詰めて言えばそうなる。別に『やりたい事をするな！』だとか、『プレイヤーに奉仕しろ！』って意味ではないがな。だがそのシナリオがプレイヤーの為に用意されたものなら決して吟遊状態に陥る事はない」
　
「シナリオを作った際に見直すべきなのは、その物語における重要な分岐がプレイヤー達の手に握られているかどうかだ」

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　マナー①「プレイヤーの為に物語を用意する」
　プレイヤーをやっていて萎える状況は「自分達がどう動いてもシナリオが変化しない」と感じた時だ。ＧＭが用意した落としどころに強引に引っ張られている際などにそれは感じられるだろう。
　無論プレイヤーのワガママが過ぎる場合もあるが、多くの場合「こういう展開」がやりたいからと作ったシナリオでこういった事故が発生する。
　簡単に言えば「こういう展開」という結論ありきでシナリオを築き上げていくと、予想外の事態が起きた場合にＧＭの「やりたかった事」の根底が破壊されるのだ。そして予想外の事態は必ず起きる。

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「例えばお前、よくシナリオ崩壊して悶絶するよな？」
「ぐむ、そ、そんなことないよ！」
「だってお前、リプレイ読んだけどこの前の沈黙シリーズみたいになってたシナリオ、本当はラピュタみたいな感じにしたかったんだろ？」

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「だ、だって！あれはドラキュラちゃんが初期スクラッチでセガールみたいな性能のキャラを持ってくるせいでああなっちゃたんだもん！」
「いや、別に責めてねぇよ。オッサンが合気道でコア破壊して天空城沈めるシーンすげえ良かった。『破滅ノ呪文ハ知ラナイガ……』『タブン俺ノ事ダ』あの台詞すげぇ痺れた」
「だ、だって！あれは皆が呪文調べないまま最終決戦に乗り込むから、ああするしかなくって……うう」ぐすん
「だから責めてないって。情報抜かなかったからああなったのか、すげぇケミストリーだな」
「……それ読みたいな」
「だ、ダメ！」
「あ、コレの中のリプレイフォルダに入ってるよ」（フラッシュメモリを差し出す）
「あっ、どうも」
「ちょ！そもそもなんで兄ちゃんがあのリプレイ持ってんの！？」
「お前の友達の狐ちゃんがくれた。ＧＭの顔が青くなる様が凄い臨場感で伝えられてたわ。お前セッション中にお茶こぼし過ぎだろ」
「……くっ、ふふふ」カチカチ
「鬼火ちゃん！せめてここでは読まないでぇ！」

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「やっべ、脱線した」
「そうですね、続きは後で読みます。……触手ちゃん？」
「しくしく」
「大丈夫そうね」
「凄い落ち込んでるよ！？」
（おもしろいな、この二人）「とまぁ、ＧＭのシナリオ通りに進まない事は日常茶飯事だ。けど、コイツの場合は何だかんだで形になっている事が多い。それはまず俺の妹がキモイくらい設定マニアな事が原因だ」
「ああ、確かに触手ちゃんってやたら設定に凝るよね」
「まーね！でもＴＲＰＧはキャラクターとか世界観とか妄想してナンボだよ！楽しいよ！」
「俺もそう思う。そしてそれはＧＭをやる上でも大事な事だ、隙無く設定を組み上げる事は物語の丈夫な屋台骨になる。シーンなんていうのは骨にくっついた皮みたいなもんだ」

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　マナー②「舞台を提供するというスタンス」
　

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　前述した通りこういうシーンを作りたいと、シーンばかり意識していると予想外の事態に弱くなるのは目に見えている。対処するにはどうすればいいのか？それはＰＣ達が自由に動き回る世界をＧＭ自身がしっかりと用意していく事で対処できる。
　具体的に挙げれば
　・ＮＰＣ
　・舞台（街や遺跡）
　・事件
　この三つをしっかりと構築していく事が重要となる。今回は事件から構築するとして、まずはそれが明るみにでた瞬間が存在し、事件を起こした何者かの目的があり、原因がある。
　ラピュタで例えるなら、事件は少女が空から降ってくるという形で主人公と邂逅を果たし、天空の城を巡る軍部とある滅んだ王国の末裔の思惑が存在し、彼女の血筋と形見の石に、彼女が追われる原因がある。
　そして事件が巻き起こる舞台がある。街にはそれぞれの特色があり、遺跡には作られた目的がある。そのそれぞれの場所に住まうキャラクター達の生活がある。その生活も含めて一つの舞台となる。
　ラピュタで例えるなら、パズーの住まう街は炭鉱街であり抜け道となるような洞穴も多く、また住まう人々には肉体労働者特有の剛毅さと快活さがある。天空の城はかつて栄華を誇った古代技術の粋であり、今では野生動物と木々に浸食され、目的を失った防人達が眠りについている。
　そして事件を引き起こす、或いは舞台にもとから住んでいたＮＰＣ達。彼らには彼らの人生と思想がある。
　ラピュタで例えるならシータは一族の秘密を守りながら生きてきた古の王家の末裔。けれども本人に王家だなんだという自覚はない。意志が強い、ただの少女だ。あと可愛い。家では食事を作っていた為料理が上手い。あと可愛い。ドーラの若い頃の次に可愛い。
　ムスカもシータと同じく古の王家の末裔だが、彼は王国の復興を目論む。頭が切れ、目的の為には手段を選ばない。王族という意識が彼の中に選民思想を構築しており、故に尊大にして冷酷。本の読みすぎで目が悪い。三分間も待てない為カップラーメンが嫌い。
　これらに空賊の一家や、軍部のもろもろを組み合わせると、ラピュタの世界が出来上がる。
　そして挙げた三つの要素をしっかりと築き上げる事で場面場面は異なるのに、登場人物はまったく違うのに、ラピュタを創り上げる事が可能となる。
　これはラピュタに限った事ではなく、シナリオを進める上でこれらの骨子がしっかりしていれば、プレイヤーの悪魔的思いつきアドリブにも、予想外のダイス事故発生にもシナリオがブレる事がないのだ。
　私の考えるＧＭの理想的なスタンスは、三つの要素がしっかり作り込まれた舞台をプレイヤー達に提供し、そこで自由に走り回ってもらう事だ。が、これはあくまで理想である。
　現実的に意識したいのは、あくまで「プレイヤー達が主役の舞台を用意する」事だ。今挙げたのはそれの強固な土台作りの１方法となる。

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「別に全部きっちりやれって訳でもないけど、オリジナルのシナリオ、特にキャンペーンを回すときなんかはある程度考えとかないと痛い目みるな」
「ふむふむ」
「でも兄ちゃぁん、ＧＭだってやりたいシーンとかあるよ～。燃える展開とか！ライバルと共闘とか！！仲間の危機に駆けつけるとか！！！」
「まぁそうだよな。勿論プレイヤーに好き勝手させるよりもＧＭが用意した展開の方が熱くて面白かったなんて事はザラだ」
「じゃあそういう時はどうするの？」
（タメ口だ……）
（タメ口だ……）「うむ！そういう時は詩人の原因と間違われる３つの要素を使ってプレイヤーをコントロールするんだ！」
「さっきの？えっと確か……」
「【マスターシーンが多い】【ＮＰＣが活躍し過ぎている】【自由度が少ない】ダネ！」
「それだ！」
「でも、それって悪い事じゃないにせよ、さっきの感じだとあまり良い事でもない印象なんだけど？」
（完全にタメ口だ！）
「うむ！それをここで説明しよう！」

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　【マスターシーンを活用する】⇒マスターシーン。これはキャラクター達の居ないシーンの出来事を、プレイヤー達に知らせる事でシナリオの方向性を伝えることが出来る。確かにこのシーン中プレイヤー達は登場していない為比較的暇だが、それが自分達のキャラクターに関わって来る重要なシーンだと伝われば決して退屈なシーンではない。
　注意としては、長々と続けるのはあまりオススメ出来ない。そういう場合は情報を小分けにして幾つかのマスターシーンをつくってしまった方がプレイストレスは軽減されるだろう。

　【ＮＰＣを活用する】⇒ＮＰＣがすべて持って行ってしまうのは確かに無粋だが、シティアドベンチャーなどではパーティー内に一人仲間ＮＰＣを用意して置くとセッション全体の進行がスムーズになる。例えばプレイヤー達が行き詰ってしまった時などに、そっとヒントを出したり。時にはイベントを誘発させる為に無茶してみたり。人質にとられてダンジョンごと炎で燻す作戦を止めてみたり。シナリオ崩壊につながる様な無謀な作戦に「やめておいた方がいい」とキャラクターの発言として告げる事が出来るのだ。　
　ＮＰＣはシナリオコントロールの強い味方だが、あくまで脇役であることを忘れてはならない。

　【自由度を絞る】⇒自由度を絞ると言っても完全に奪う訳ではない。『何でもしていい』を『選択肢の中から』に変えるのだ。特に物語の分岐となるような場面でこの選択形式は非常に有効だ。プレイヤーが自由を感じる瞬間は自らが決めた方向に進むときだ。その方向がこちらから提示されたものであっても選ぶ権利がある内はプレイヤー達は窮屈さを感じないだろう。
　この選択肢は「空から攻める」「地下から攻める」「正面突破」「隠密潜入」といった形式のものから、状況によって絞り込むダンジョンなどでの「右か」「左か」。悲鳴と雄叫びに「行くか」「行かぬか」といった風にＧＭから投げかけるタイプのものまで様々だ。
　実際ある程度選択肢を用意し、自由度を絞り込んだ方がセッションの進行はスムーズになる事が多い。
　ただ、どのような状況であっても用意していなかったプレイヤー達の思いついた「否定の余地のない第三の選択肢」が存在する事も多くあり得る。そういった事態を許容するかしないかは、それこそ各々のプレイスタイルによるところだろう。

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「まぁ長々と話したが、何事も兼ね合いが大事ってことだな」
「なんか、ＧＭって難しいんだね」
「そんな事ないよ！むしろ簡単だよ！単に兄ちゃんの説明が弩下手なだけだよ！」
　「　」
「ああ、そうなんだ」
「要するに皆で楽しくやろうって気持ちが大事なんだよ！ね？兄ちゃん」
「ソウダネェ」ぐでぇ
「あれ？どうしたの？まだシナリオマナーしか言ってないよ？ホラホラ！」
「どうせ俺ゆるキャラですしぃ」いじいじ

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　「何言ってんの！ホラ起きてよ！」ゆさゆさ

　「うえ～～」ぐらぐら

　「じゃあ次回ね！次回やるよ！……セイ！！」

　ドグシャァ！！

　「ギョハ！！ぐううぎぎぎぎ締まるぅぅぅぅ」

　「次回ね！」ギチギチギチ

　「ぐぎぎ……！」ぶくぶく




（帰んないかな……）

つづく