樹海に居た

　


　先週の土曜日に富士の樹海に行ってきました。

　美しい紅葉が山梨を鮮やかな秋色に彩っていました。樹海に行ってきました。
　何故私が樹海に行ったのか、これは長い話になります。
　およそ二か月前、高校時代の先輩からｓｋｙｐにチャットが入りました。

　先輩「触手、樹海行かない？」
　触手「あ、はい」

　先輩は私が高校時代に唯一尊敬した男です。ファーストコンタクトは男子寮で、私の同部屋の別の先輩（イケメン）のファブリーズにおしっこを入れるという形でその異才の感性を見せつけられました。

　イケメン先輩が「なんか、この部屋臭いね……？」と訝しんでファブリーズを撒くたび部屋中に小便が拡散するという現象は今思い出しても頬が緩みます。頭おかしい。
　先輩が以前女絡みでこの世の終わりのような状態の時、しきりに「一緒にインドに行こう」「聖なるどぶ川ガンジスで新しい自分をアウトプットするんだ」と誘われていたのですが、最近インドはやめてもっぱら心霊スポットに突撃する方向に変化したようです。良い傾向ですね。
　先輩は霊験あらたかな家の生まれの没落貴族元ヤンギタリスト建築士見習いなので大変強い守護霊がいるそうです。家お抱えの守護霊を視る人（←東北の風習はよくわかりません）によると先輩の守護霊はスタープラチナ並みに強いそうなので、結果として先輩は霊が見えないのだそうです。
　だから心霊スポットに突撃しても平気、ないし可能ならスピリチュアルな新たな感性を獲得したいのかもしれません。ですが私は先輩ではないのでよくわかりません。
　ちなみに先輩の家の水はめっちゃ美味しいです。三十万する浄水器がカルキと邪気をろ過しているそうです。シャワーの水も美味しいので風呂場で毎回爆笑します。

　今回の樹海突撃の主旨を説明すると。

　①樹海には自殺者達が足を踏み入れる場所が三か所ある。⇒３チーム編成で突入

　②その点を線で繋ぐとある場所で交わる。
　
　③そこは森の中で不思議とひらけた空間になっている。⇒中心で合流。

　④南米の神を奉ろう。　⇒慰霊と鎮魂の宴。




　という感じです。

　ですが当日近くまで仕事でバタバタしてた私はこの企画がどのように変化していたか知る由もありませんでした。

　・まず資金の関係で車が一台になり、三か所からの突入が不可能になりました。
　・次に何も知らされていない、パンツとギター（でかい）しか持っていない後輩が来ました。
　・レンタカー一台に八人+ギター（でかい）が狭い。
　・ヘラクレス（アダ名）の持ち物が雀パイと雀マットと上着のみ。
　・南米の神の話は一切でなくなっていたが、代わりにクーラーボックスには肉１０ｋｇと豚の心臓が入っている。

　朝の吉祥寺に、暗雲が立ち込めてきました……。
　
　中略）～

　そしてついに我々は夕方ごろ、樹海付近のキャンプ場に到着しました。私は内心（先輩、またキャンプ場なのかよ……）とテンション下がっていました。旅のしおりには「温泉」と書かれていたので安宿にでも止まるのかと思ったらコテージでした。温泉どころかユニットバスでした。
　そしてコテージに暖房器具はいっさいなく、この時期の山梨はすでにとても冷えていました。私達は凍える子豚のように身を寄せ合って毛布にくるまり、「バーベキュー、バーベキュー食べよう」と囁きました。
　バーベキューになりました、久しぶりに酒も入った私はモリモリお肉を食べました。身体もポカポカしてきてお肉も美味しかったです。ただ途中で野菜買おうね～とか言ってたのに完全に忘れていたので肉オンリーでした。
　ハラミ、ピートロ、タン塩、テッチャン、タンドリーチキン、烏賊軟骨、もちゃもちゃ食いました。管理人さんが来たので全員で拍手でお出迎え、この時点で私達は受付を済ませていなかったので完全に不法侵入して外で肉を焼いてる人たちでした。うっかり。
　酒が入った流れで先輩が豚の心臓をぶった切り始めました。その間、私たちは無言でそれを眺め、後輩が背後で『原爆許すまじ』を弾いていました。後輩は学生時代糞みたいなメタラーでしたが、大学生活でサブカルこじらせて糞みたいなヒッピーになってました。
　私たちが豚の心臓は森の中心で荒ぶる霊魂に捧げる予定のものだったという事を知るのは、私たちがハツ（豚の心臓）を食べ終えた後でした。
　食事を終えた私たちは満を持して、コテージに戻りました。
　嵐です。嵐が来たのです。（実際むっちゃ風が吹いて看板とか倒れてました）

　霊峰、富士の影に、暗雲が立ち込めて来ました……。
　
　中略）～

　場は凍り付いていました。四順して三鳴き、ポンポン、ポン、ドラは東、親番の私はドラ４ダブ東トイトイで既に張っていました。最早三人からしたら字牌を棄てるのもままならないでしょう。
　そう。
　目が覚めた私は気が付けば麻雀をしていました。
　なんででしょうか？
　その時はあまりの寒さで頭が動いていなかったようです。
　続いてマジックザギャザリングの構築戦が始まりました。新版を１ケース小林君（アダ名）が買ってきてくれたのです。この箱で今一番波に乗っているトークン召喚系の看板モンスターのプレミアが当たったのでそれだけで３万ちかくするので、小林君はそれだけで大満足でした。
　ひさびさのギャザはやっぱり楽しかったです。ハイランダー以外でデッキを作るのが久しぶりだったのですごく新鮮でした。いつ樹海いくんだよ。もう四時だよ。そしてついにその時がきました。

　樹海です。
　
　まずこの時点で脱落者が三名。後輩（酒で潰れている）小林君（怖い）ヘラクレス（起きない）。
　残った我々は５人は人目を避けながら樹海の奥へ足を踏みれていきます。

　～失われた供物（ハツ）の行方は

　　　　「おい、同じとこグルグル回ってないか？」

　自殺を呼び止める者、巡回者達　

　　　　　　　　　　　　　　　「聴こえる、聞こえるよ、森の声」

　　　「うわ！すっげぇ目ぇ光ってる！！」←猫

　　　　　　　　　森は果たして、心を開くのか

　　　　あと二時間で道路が封鎖される。←（自転車レース）

　　　　　　　　　「俺達、生きて帰れんのかな？」




つづかない

感想；かちかち山ロープウェイで知った。ウサギは糞だわ。