涙目のバロール第一話③【オープニング中編】
- 2013/09/27
- 23:45
今回はPC③柳昇とPC①楠木三紀人のオープニングになります。
ちなみに本来のダブルクロスでは、このあたりでオープニングフェイズは終了し、ミドルフェイズに移行するのですが、当時ダブルクロスの経験がプレイヤーで一回やっただけだったので、ミドルフェイズの概念を理解しておらず、シナリオの半分がオープニングという訳の分からない仕様になっています。一応、区切りとして高校生達が覚醒するまでを便宜的にオープニングとして記載していきます。
シーン3:PC③ BGM:ビサイド
帰り道、君はいつもの面子と別れ涼と二人でいつものように歩いている。涼の腕に引かれた自転車の車輪がカラカラと住宅地に音を立てる。(二人は家が近いので自転車通学は認められていないが、朝が弱い涼は遅刻しそうになると度々無断で自転車を使って登校している。)
夕日に晒されたアスファルトの上に、二人の影が伸びる。
「なぁ、③。お前進路どうすんの?」
「そうか、……」
少しの沈黙
「ぶっちゃけさ、俺、中学にしても高校にしても、①とか②とかお前とかと同じなら何でもいいやって思っててさ、今まで何も考えてなかったんだよな」
「はぁ、めんどくせぇ……駄目だ、早く帰ろうぜ」
自転車にまたがる涼、荷台を親指で指して
「ほら」
「おいおい、お前……また重くなったんじゃねぇの?」
適当な軽口を叩きながら涼の自転車は景色を吹き飛ばして家路を急ぐ。太陽は今にも地平線の向こうで零れ落ちそうで、道を濃い赤紫色に染めている。BGM止め
そんな中、BGM:境界線上にて
電灯の下で銀髪の青年すれ違った。一瞬彼と目があう。彼は不思議そうな顔で君を見ると、次の瞬間今にも泣き出しそうな笑みを浮かべ、何事かを呟いた。
涼「ん、どうした?」
「誰も居ないじゃん、……お前それって、まさか、ゆ……幽霊じゃ」
青ざめる涼、涼は恐いのが駄目。
「ここここ、恐くねぇよ!?びびってねえし!でも最近不審者多いからな、早く帰るか」
そうして君たちはその場を後にした。
銀髪の青年は確かに『すぐに迎えに』と言っていた気がしたBGM止め
※涼の③に対するリアクションは若干ドライ。
PC③④以外にスポット情報
スポット情報シート 2
水谷涼はどう見ても「PC③」に惚れている。
しかしPC③は愚か、涼本人さえそれに気付いていないようだ。
君らはたまに物凄くひっぱたきたくなる。
いや、むしろひっぱたいてやるべきなのだろうか?
実際のプレイの様子

電灯の下←クリックで音声を再生。
日常に違和感が差しこまれる場面です。今回はシーンの空気転換を音楽で一気に行いました。基本的にプレイヤーの恐怖心や不安感を煽るのに音楽はとても優れています。適度に緊張した状態はセッションを引き締まったものにするので、私は意識的にホラーテイストの場面を用意する事が多いです。
シーン4:PC①
時間は少し遡る。君は幼馴染達と帰宅途中だ。まずは何か思いつめた様子の②と途中の十字路で別れる。
涼「じゃあなー、……あいつ何かあったんかな?知ってる①?」
そして次に③と涼と別れる
「じゃあ①、また明日な」
仲間達と別れ、君は一人家路を歩く。背中から照らしてくる夕日、何処かの家からか漂ってくる夕食の匂い。歩道の白線の上を小学生の男の子達が腕でバランスをとりながら君の横を歩いている。
「ここから落ちたら、海な、鮫いっから即死だかんなー」
「ケンター、もうご飯よー」「あーい」「じゃなー」「バイビー」
バラバラと子供たちは家に帰っていく。
野球帽を目深にかぶった少年だけがポツンと君の隣に残った。
「なぁなぁ、高校生のアンちゃん。友達の友達が言ってたんだけどな」
仮「コアラって握力五トンあんだって!すっげえよな!バイビー!」(※何か意味深な事、言わせたい)
実際のプレイの様子
世界の終りに響く歌←クリックで音声を再生。
曲によっては時刻を演出する事も可能です。このようなケースに関しては絵や口頭での情景描写よりもスムーズにイメージを共有できます。尚、深間市では五時半になると「蛍の光」が流れます。
しばらくすると近くでパトカーのサイレンが聴こえる。あたりはもう暗い。
何か事件でもあったのだろうか?
すると君の近く田んぼの影から小さな呻き声が聞こえる。
「う、うう……」
誰か田んぼに落ちて怪我でもしているのだろうか?
①が声をかけると、その怪我人はこっちを向いた気配がした、顔は暗くて分からないが、どうやら白衣のような白い服を羽織っているようだ、それだけが夜道の薄明かりを吸ってくっきりと見える。
BGM:下弦の月
小さな声でぼそぼそと「駄目だ……探さなければ、まったく馬鹿だ、……それでも、これしかない……それが救いだと……信じていたのに……」
「ああ、君は、君はもしかして」
ゆっくりと起き上がって近付いてくる白衣の男。近付いてきて初めて分かる、その男は奇妙な体格をしていた。まず上背が2mを越えており、手足には丸太のような筋肉が白衣を内側からはち切れそうにしている。それでいて胸周りはまるで板のように薄い。
君はその異様な雰囲気に呑まれ、凍り付く。
爛々と輝く目は、焦点が定まらず君の斜め上を見ながらうわ言のようにぶつぶつと何事かを繰り返している。
※キャラクターは知るよしもないが、この男はどうやらジャーム化しているらしい。
男は言う。
「き、奇跡だ。お願いだ、きっと、きっと君なんだ。どうか、恐がらないで欲しい、こうするしか方法がなかったんだ、奴らは頭の中を覗くから、これが一番、一番安全で、安全で唯一の方法なんだ、あまりにも分が悪い、賭けにもならない、ふふふ、無責任だ。すまない、すまない、きっとこれから沢山死ぬ、本当にすまない、すまないいい」
男は訳の分からない事を呟きながら、がりがりと爪で顔をかきむしる、血が吹き出し、男の顔半分が赤く染まっていく。
「だがでもしかし、希望はあるんだ」
男は白衣のポケットから小さな黒い箱を取り出し、君に押し付けてくる。
「いいかい?いいかい君?手放してはいけない、絶対だ、信用出来ないかい、仕方ない、俺、俺はもう化け物になってしまったのだから、ふふふ、狂ってしまった、ふふ、だが、だがそれでも」
ほんの一瞬だが、月明かりに照らされた男の瞳に、優しげな光が宿った気がした。
「あの子を、信じてやってくれ」
「来る……ふふふ、いいだろう来るがいい!俺の役目は終わった、だが、ただでは死なんぞ!」
雄叫びを上げて男は電柱の天辺まで一息に跳躍すると、そのまま冗談のような俊敏さで屋根を飛び越えながら消えていった。
あとには君と黒い箱だけが残った。 続けてマスターシーンへ
実際のプレイの様子

◆木崎の戦い←クリックで音声を再生。
一本の曲の内に一気にマスターシーンまで演出する事で、セッションの流れを保ったままプレイヤー不参加のシーンを行う事が出来ます。こういった方法の際は歌詞の無いBGMよりも、場面と詞がシンクロするような曲を用意すると印象が強く残ります。ですが、性質上プレイヤーのロールを遮ってしまう事が多くなるので注意が必要です。今回は狂人との対話にこの演出を用意したので、半ば強引でも時間内に収める事が出来ました。
シーン5:マスターシーン
人気のない夜の工場区画。
白衣の異形は街を彷徨いながら、一枚の写真をみつめている。
「おや、もう鬼ごっこはお仕舞いですか木崎研究員」
その背後から現れた銀髪の青年。
ぎょろりと首をねじり、振り返る白衣の異形。
「あの子をお前たちの、す、好きにはさせないっサセルモノカ殺す、殺す殺す殺す!殺す!!」
「やれやれ、今まで逃げ回っていた方の言葉ではありませんね」
叫び声をあげながら白衣の異形が銀髪の青年に猛烈な勢いで迫る。
青年は腕を広げ、出迎えて抱きしめるような動きをみせた。だが、異形の巨体は、《するり》と青年を通り過ぎた。
「まだ開演まで間があります」
青年は腕の中何かに語りかける。
その背後で、異形の巨体が小走りになり、歩き、やがて立ち止まり、トンと腰を落とした。
「そして貴方には、まだ仕事があるのです」
銀髪の青年は携帯を取り出す。
「マスター、完了しました。全ては滞りなく、開演は間もなく。では」
青年は工場区画の夜に消えていく。
残されたのは膝をついた首のない巨体、
その手の中で、写真に映る白衣の青年と、一人の少女が笑っていた。
BGM止め
次回からシナリオがようやく動き始めます。
今回の記事はイラストが少ないのですが、これは友人宅に使い終わった資料をキャンペーン分まるごと放置しているからです。どうしてもサプリが増えると荷物が重くなるので、いちいち持って帰るのが面倒になってよく集まる友人の家に色々放置する、これTRPGあるあるですね。
ちょっと今日取りに行ってきます。にゅるん。
※イラストを追加9/29 sugoi 薄いネ! ⇒Aさんが濃くしてくれました!
涙目のバロール第一話④リンク
ちなみに本来のダブルクロスでは、このあたりでオープニングフェイズは終了し、ミドルフェイズに移行するのですが、当時ダブルクロスの経験がプレイヤーで一回やっただけだったので、ミドルフェイズの概念を理解しておらず、シナリオの半分がオープニングという訳の分からない仕様になっています。一応、区切りとして高校生達が覚醒するまでを便宜的にオープニングとして記載していきます。
シーン3:PC③ BGM:ビサイド
帰り道、君はいつもの面子と別れ涼と二人でいつものように歩いている。涼の腕に引かれた自転車の車輪がカラカラと住宅地に音を立てる。(二人は家が近いので自転車通学は認められていないが、朝が弱い涼は遅刻しそうになると度々無断で自転車を使って登校している。)
夕日に晒されたアスファルトの上に、二人の影が伸びる。
「なぁ、③。お前進路どうすんの?」
「そうか、……」
少しの沈黙
「ぶっちゃけさ、俺、中学にしても高校にしても、①とか②とかお前とかと同じなら何でもいいやって思っててさ、今まで何も考えてなかったんだよな」
「はぁ、めんどくせぇ……駄目だ、早く帰ろうぜ」
自転車にまたがる涼、荷台を親指で指して
「ほら」
「おいおい、お前……また重くなったんじゃねぇの?」
適当な軽口を叩きながら涼の自転車は景色を吹き飛ばして家路を急ぐ。太陽は今にも地平線の向こうで零れ落ちそうで、道を濃い赤紫色に染めている。BGM止め
そんな中、BGM:境界線上にて
電灯の下で銀髪の青年すれ違った。一瞬彼と目があう。彼は不思議そうな顔で君を見ると、次の瞬間今にも泣き出しそうな笑みを浮かべ、何事かを呟いた。
涼「ん、どうした?」
「誰も居ないじゃん、……お前それって、まさか、ゆ……幽霊じゃ」
青ざめる涼、涼は恐いのが駄目。
「ここここ、恐くねぇよ!?びびってねえし!でも最近不審者多いからな、早く帰るか」
そうして君たちはその場を後にした。
銀髪の青年は確かに『すぐに迎えに』と言っていた気がしたBGM止め
※涼の③に対するリアクションは若干ドライ。
PC③④以外にスポット情報
スポット情報シート 2
水谷涼はどう見ても「PC③」に惚れている。
しかしPC③は愚か、涼本人さえそれに気付いていないようだ。
君らはたまに物凄くひっぱたきたくなる。
いや、むしろひっぱたいてやるべきなのだろうか?
実際のプレイの様子


日常に違和感が差しこまれる場面です。今回はシーンの空気転換を音楽で一気に行いました。基本的にプレイヤーの恐怖心や不安感を煽るのに音楽はとても優れています。適度に緊張した状態はセッションを引き締まったものにするので、私は意識的にホラーテイストの場面を用意する事が多いです。
シーン4:PC①
時間は少し遡る。君は幼馴染達と帰宅途中だ。まずは何か思いつめた様子の②と途中の十字路で別れる。
涼「じゃあなー、……あいつ何かあったんかな?知ってる①?」
そして次に③と涼と別れる
「じゃあ①、また明日な」
仲間達と別れ、君は一人家路を歩く。背中から照らしてくる夕日、何処かの家からか漂ってくる夕食の匂い。歩道の白線の上を小学生の男の子達が腕でバランスをとりながら君の横を歩いている。
「ここから落ちたら、海な、鮫いっから即死だかんなー」
「ケンター、もうご飯よー」「あーい」「じゃなー」「バイビー」
バラバラと子供たちは家に帰っていく。
野球帽を目深にかぶった少年だけがポツンと君の隣に残った。
「なぁなぁ、高校生のアンちゃん。友達の友達が言ってたんだけどな」
仮「コアラって握力五トンあんだって!すっげえよな!バイビー!」(※何か意味深な事、言わせたい)
実際のプレイの様子

曲によっては時刻を演出する事も可能です。このようなケースに関しては絵や口頭での情景描写よりもスムーズにイメージを共有できます。尚、深間市では五時半になると「蛍の光」が流れます。
しばらくすると近くでパトカーのサイレンが聴こえる。あたりはもう暗い。
何か事件でもあったのだろうか?
すると君の近く田んぼの影から小さな呻き声が聞こえる。
「う、うう……」
誰か田んぼに落ちて怪我でもしているのだろうか?
①が声をかけると、その怪我人はこっちを向いた気配がした、顔は暗くて分からないが、どうやら白衣のような白い服を羽織っているようだ、それだけが夜道の薄明かりを吸ってくっきりと見える。
BGM:下弦の月
小さな声でぼそぼそと「駄目だ……探さなければ、まったく馬鹿だ、……それでも、これしかない……それが救いだと……信じていたのに……」
「ああ、君は、君はもしかして」
ゆっくりと起き上がって近付いてくる白衣の男。近付いてきて初めて分かる、その男は奇妙な体格をしていた。まず上背が2mを越えており、手足には丸太のような筋肉が白衣を内側からはち切れそうにしている。それでいて胸周りはまるで板のように薄い。
君はその異様な雰囲気に呑まれ、凍り付く。
爛々と輝く目は、焦点が定まらず君の斜め上を見ながらうわ言のようにぶつぶつと何事かを繰り返している。
※キャラクターは知るよしもないが、この男はどうやらジャーム化しているらしい。
男は言う。
「き、奇跡だ。お願いだ、きっと、きっと君なんだ。どうか、恐がらないで欲しい、こうするしか方法がなかったんだ、奴らは頭の中を覗くから、これが一番、一番安全で、安全で唯一の方法なんだ、あまりにも分が悪い、賭けにもならない、ふふふ、無責任だ。すまない、すまない、きっとこれから沢山死ぬ、本当にすまない、すまないいい」
男は訳の分からない事を呟きながら、がりがりと爪で顔をかきむしる、血が吹き出し、男の顔半分が赤く染まっていく。
「だがでもしかし、希望はあるんだ」
男は白衣のポケットから小さな黒い箱を取り出し、君に押し付けてくる。
「いいかい?いいかい君?手放してはいけない、絶対だ、信用出来ないかい、仕方ない、俺、俺はもう化け物になってしまったのだから、ふふふ、狂ってしまった、ふふ、だが、だがそれでも」
ほんの一瞬だが、月明かりに照らされた男の瞳に、優しげな光が宿った気がした。
「あの子を、信じてやってくれ」
「来る……ふふふ、いいだろう来るがいい!俺の役目は終わった、だが、ただでは死なんぞ!」
雄叫びを上げて男は電柱の天辺まで一息に跳躍すると、そのまま冗談のような俊敏さで屋根を飛び越えながら消えていった。
あとには君と黒い箱だけが残った。 続けてマスターシーンへ
実際のプレイの様子


一本の曲の内に一気にマスターシーンまで演出する事で、セッションの流れを保ったままプレイヤー不参加のシーンを行う事が出来ます。こういった方法の際は歌詞の無いBGMよりも、場面と詞がシンクロするような曲を用意すると印象が強く残ります。ですが、性質上プレイヤーのロールを遮ってしまう事が多くなるので注意が必要です。今回は狂人との対話にこの演出を用意したので、半ば強引でも時間内に収める事が出来ました。
シーン5:マスターシーン
人気のない夜の工場区画。
白衣の異形は街を彷徨いながら、一枚の写真をみつめている。
「おや、もう鬼ごっこはお仕舞いですか木崎研究員」
その背後から現れた銀髪の青年。
ぎょろりと首をねじり、振り返る白衣の異形。
「あの子をお前たちの、す、好きにはさせないっサセルモノカ殺す、殺す殺す殺す!殺す!!」
「やれやれ、今まで逃げ回っていた方の言葉ではありませんね」
叫び声をあげながら白衣の異形が銀髪の青年に猛烈な勢いで迫る。
青年は腕を広げ、出迎えて抱きしめるような動きをみせた。だが、異形の巨体は、《するり》と青年を通り過ぎた。
「まだ開演まで間があります」
青年は腕の中何かに語りかける。
その背後で、異形の巨体が小走りになり、歩き、やがて立ち止まり、トンと腰を落とした。
「そして貴方には、まだ仕事があるのです」
銀髪の青年は携帯を取り出す。
「マスター、完了しました。全ては滞りなく、開演は間もなく。では」
青年は工場区画の夜に消えていく。
残されたのは膝をついた首のない巨体、
その手の中で、写真に映る白衣の青年と、一人の少女が笑っていた。
BGM止め
次回からシナリオがようやく動き始めます。
今回の記事はイラストが少ないのですが、これは友人宅に使い終わった資料をキャンペーン分まるごと放置しているからです。どうしてもサプリが増えると荷物が重くなるので、いちいち持って帰るのが面倒になってよく集まる友人の家に色々放置する、これTRPGあるあるですね。
ちょっと今日取りに行ってきます。にゅるん。
※イラストを追加9/29 sugoi 薄いネ! ⇒Aさんが濃くしてくれました!

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