それではシナリオ本編に入ります。
音声データも前回と合わせて掲載していきますが、私達の卓では
音楽を使った演出が多分に用いられています。
音響が入ると空間に意味が挿入されるのは、演劇をやっている人間からすれば当然の事ですが、TRPGで使用する際も、イラストや口頭よりも遥かに説得力のある場面転換、状況描写、心理描写が行う事が可能です。
何より音楽を利用したセッションに於いてはロールプレイの
気恥ずかしさがかなり軽減されます。
近年ではMP3など小型で音質が良く、曲の管理も容易い良質なガジェットが安価で手に入ります。これによりTRPGのセッションにおいてもまるで演劇のようなタイミングで曲を挿入、カットする事が可能になりました。
実際に使用したシナリオと音声でその用法を簡単にご紹介します。
まずはPC④イワン・カラシニコフとPC②本田和彦のシーンになります。
opフェイズ
PC④以外はオーヴァードとして覚醒していない状態から始まる。
シーン①:PC④ 君はある疑念にかられている。その原因は前回の作戦にあった。
神奈川県某所、港の倉庫街。その一角。
既にスナイパーは位置に着いた。各員突入体勢を整え、あとは隊長黒沢の声一つで迅速に状況を開始できる。この情報を手に入れるまでに部隊は2人の死者を出している。うち一人は君の後輩だった。
警戒する黒服たち、倉庫内中央のテーブルで向かい合う2人の男。一人は獅子のごとき金髪の男、
マスターオーケストラ【レオニード・アンセム】だ。向かい合うは涼しげな目元をし、上等なスーツを着こなす壮年の男。世界規模で製薬事業を展開する
天羽コンチェルン会長、天羽誠司だ。
君の後輩は天羽コンチェルンとFHの繋がりを洗っていく際、命を落とした。
突入直前、車椅子の老人が何処からともなく現れる。2人は席を立ち、深々と老人に頭を垂れる。
その様子を確認した黒澤が突如作戦中止、撤収命令を下す。
「これは命令だ」 腑に落ちないままに状況は終了し、部隊は神奈川にある本部まで引き揚げていく。それが、一月前のことだ。
その日、君は訓練後に黒沢から酒の誘いを受ける。
実際のプレイの様子
シーン①a居酒屋へ行こうよ←クリックで音声を再生。 このような形で音楽を利用すると、挿入と同時に場面が一瞬で飲み屋へと変化させる事が出来ます。
居酒屋 あけみ BGM:人の夫
混雑する居酒屋内、カウンター席に二人は腰掛ける。
「どうした……、機嫌が悪いな」
「なぁ、④、組織に身を置く以上知らないほうがいい事もある……、それでも納得できないか?」
「……そうか、なら、これは俺の独り言だ」
「組織という形態をとっている以上、完全な正義などというものは存在しない。UGNとて、違いない」
「俺達の扱う最新鋭の装備と機材、日本支部創設初期から見れば考えられないほどにUGNの日本におけるインフラ整備は進んだ、ある時期を境に」
「FHの日本における初めての組織的テロ活動。当時の政党の元首が倒れ、国の中枢で秘密裏に身内の不幸が多発した、UGN日本支部はそれを迅速に阻止する事で国家に自身の価値を示した」
「だが、それこそが、ある男のプレゼンだったのさ。UGN、そしてFHを披露する為のな」
「男の名は草田巌造、政治とオーヴァードを中立つ、この国の深遠だ」
「政府が表立った防衛費をUGNに用意するにあたって草田はその場の顔となった、UGNは公費の一部をバックマージンとして草田に工面する事によって日本での活動のさらなる最適化を図った」
「そしてそれは、FHも同様だったと聞く。後ろ暗いものを背負って生きる連中ほどそういった力に寄りかかるようになる。草田は権力者たちにFHの暴威を仲介した」
「両陣営への太いパイプと莫大な財力を背景に、草田は日本の中枢、引いてはUGN本部とFH幹部陣にまでもその地盤を広げていき、今尚絶妙なバランス感覚でそれらを制している」
両者が激しく激突すればするほど双方は活性化し、結果として更なる利益が草田に流れる。
「完全なアンタッチャブル、それが、あの男だ」
「悪か正義で語れば草田はまごうことなき悪党だが、損か得がで言えば、得さ。俺達にとっても、俺達が守りたいものにとっても。故に殺せん」
「草田はあまりにも無秩序に強大だったオーヴァード達を、分かり易く二分化させた。守るものと、壊すものに」
「皮肉なもんだ、俺達はそのおかげで護る者として、人の中で自分の居場所を見つける事が出来た。人としての自分の居場所をだ」
「ふぅ、独り言が長くなった……出るか、お勘定」
BGM止め
「長い目で見れば、俺は枯れ腐っているだけなのかもな」
「だが、俺は組織の中で最善を尽くす事を選んだ。霧谷という男がこの国で行使する正義を見届けながら、この手で救えるものを根こそぎ救い続ける」
「しかし、お前は俺じゃない」
「おう、今のも全部、独り言だ」
黒沢は人を食ったような不敵な笑みを浮かべた。
資料※オーケストラセルを入手 シーン終了。
実際のプレイの様子
男達の挽歌←クリックで音声を再生。 今度は逆に、音響を止める事で舞台が外へと移った事を演出可能になります。
シーン2:PC② 君は何かの用事の帰り、夕暮れの校舎を一人歩いていた。グラウンドから野球部の掛け声と澄んだノック音が、何処かの教室からは吹奏楽部の練習が聴こえてくる。
君が欠伸をしながらふと窓を見やると、階下の美術室に桐谷ルイの姿を見つける。ルイと美術室の組み合わせが珍しかった君は迷わず美術室に向かった。
美術室
BGM:OKAMOCHI&JERSEY
扉の向こう、ルイは君に背を向けた状態で黙々とキャンパスに向かい絵を描いている。
「あ、え、は?②君なんで、ここに」 明らかに動揺しながらキャンパスを隠すルイ。
「こ、これですか?な、なんでしょう・・・…?違いますクイズじゃないです」 何か、妙に必死に隠そうとしている。
※どかす→彼女は非力だ。
「ああっ」と小さな悲鳴を上げるルイ。その背後からあざやかな色彩の絵が出てくる。
※素人目に見ても上手い。
ルイは耳まで真っ赤だ。もとが色白だから余計に目立つ→どうして隠すか、上手いじゃん等
「そんな全然です、病院にいる時、他にやる事がなかったから描いてただけで……」 と、どんどん声が尻すぼみに小さくなり、顔はもう湯気が出そうなほど紅潮しきっている。
「お願いです、②君、これ秘密にしてて下さい」 君は少し火照った彼女に手を握られ懇願される。やわらかい。何かもおやもおやする。
「ありがとう②君!」
実際のプレイの様子
立ち込めるラブコメ臭←クリックで音声を再生。 今回はシーンの雰囲気を演出します。ラブコメをやるのはネタでも相応のカロリーを消費しますが、これにて砂糖を吐くようなロールもお安い御用です。
※何故見せたくないのか→中学時代の苛め、表彰された途端「妾の子」の噂が全校生徒に広まった。
絵はグラウンドの桜並木のようだ。その木の下で男女数人が笑いあっている。だがその部分は書きかけだ。雰囲気でおそらくこれが自分達だと察する。絵の中にルイに該当する姿はない。
「私は、見てる側だから」 と、そう笑う彼女が少し寂しげに見えた。
※シチュエーションによって、つんのめってルイにのしかかられるイベント。
「ごごご、ごめんなさい」 このシーンを経た際、シーン終了後・
スポット情報※1を入手。「猫背で隠されているが、桐谷ルイの胸は大きい、さらなる詳細を知りたければGMに「目標値は?」と尋ねよ。無言で白兵or知覚で目標値8以上を振ればGMはスポットシートにそっとFと書き足す」
帰宅後、紅潮するルイの顔と、「二人だけの秘密」というフレーズに君は枕に溺れた。もやぁ~。
BGM止め シーン終了。
※1このキャンペーンはシノビガミに似たスポット情報ルールという独自のハウスルールを使用しています。 いわゆるプレイヤー間の秘密の情報です。細かなルール設定に関しては記事の末尾に記載します。
それでは今回初めてスポットシートを受け取ったプレイヤーの反応をどうぞ。 実際のプレイの様子
スポット情報お腹痛い←クリックで音声を再生。 常にセッションに緊張感と新鮮さを取り入れていく為にも、適度なハウスルールの導入はプレイの刺激になります。尚、PC②のPLじじぃ氏は悶絶した後、このキャンペーンが終わる一年近い間この情報を死守していました。(余談)
次回はPC③柳昇と、PC①の楠木三紀人のオープニングシーンとなります。
おまけ
『これはセッション開始直前に、プレイヤーに配布した特殊ルールの説明です。』 キャンペーン【涙目のバロール】を始めるにあたってGMから皆様へ特殊ハウスルールの採用 本キャンペーンでは通常のダブルクロスでは使用されない幾つかの特殊ルールを使用して行います。
それに関する大まかな説明と、幾つかの注意事項をここに提示します。
NPCロイス 【涙目のバロール】では登場するNPCがロイスを取得していることがあります。
これはPC達と同様にシナリオ進行、PCの行動如何によってはタイタス化し、場合によってはそのNPCがジャーム化することもあります。
またジャーム化寸前の暴走状態のNPCにロイスを結ばせる事で、どうにか人間に留まらせる事も可能です。これに関する重要なヒントをスポット情報の項目に記載しておきます。
スポット情報システム これは条件を満たした、或いは特定のシーンを通過したPCにのみに与えられる情報です。スポット情報はGMからプレイヤーへスポットシートという形で手渡されます。
このスポットシートは大切に保管して下さい。
また、スポット情報を取得したプレイヤーは不用意にこの情報を他のプレイヤーに提示しないで下さい。
言わばこれは《秘密》の情報なのです。
プレイヤーはGMに許可を得て、このスポット情報を任意のタイミングで他のプレイヤーに開示する事が出来ます。その場合は全PC参加の情報開示シーンが発生します。このシーンによる登場侵食率の上昇はありません。
情報を開示した場合、キャンペーンに何らかの変化が発生します。それは新しい情報、もしくはトリガーイベントという形で反映します。
例えばスポット情報がNPCの何らかの秘密であった場合、不用意にその情報を公開すればNPCはPCに対するロイスを消失し、ジャーム化へのトリガーとなる可能性もあります。
そして逆に開示した情報がそのNPCの暴走を抑えるヒントになる場合も同様に存在します。
無論最後まで秘密にしておく事も可能です。胸に秘めたままの秘密がNPCに信頼感を与える場合もあれば、その秘密に連動して、新たなスポット情報が舞い込むこともあるのです。
本格的にスポット情報が意味をなすのは二話目以降なので、今回はこのシステムの雰囲気をなんとなく感じてもらえれば幸いです。
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